ハワイ州のライセンスプレートで世界情勢を読み解く

観光区域の中心部から西寄りに程よく距離を置いたハイライズに暮らす知り合いのアンティから、部屋の洗面所の水が止まらずに今にも溢れ出しそうで困っているのよと電話口で告げられ、何はともあれ、僕はひとまず彼女の部屋に急ぎ駆けつけることにした。
できるだけ直線的な最短距離を採る車での行き方として、西向きのルナリロFwy.を25Bの通し番号が振られた出口で降りてカピオラニBlvd.をダウンタウン方面に進み、マッカリーSt.との交差点を経由して運河を越えるという道順が、ほとんど反射的に、僕の頭の中では既に出来上がっていた。
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THE EDDIE 2012-2013|002:63歳の挑戦状

Eddie Aikau

僕がいる位置から見える彼は、大きく車座になった男たちの輪の中で海に向きあってしゃがみ込み、意識を集中するように視線を落として一点を見つめている。
彼の足元には、巨大な波に対して完璧な性能を発揮することに特化した長さと美しい細身の形状を持つ、オレンジ色のビッグガンが寄り添っている。
ワイメアビーチパークの砂浜に設営された、28年目を迎えるThe Eddieのオープニングセレモニーの会場では今、栄誉ある招待選手たち一人ひとりの紹介が行われている最中だ。
家族の集いのような和やかさに支えられた厳粛な空気の中、彼はその取りを飾る28人目の選手として、満を持して紹介された。
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THE EDDIE 2012-2013|001:オフィシャルサイト、公開。

The Eddie Aikau 2012-2013

いつになく、僕はいささか興奮している。
ここ1ヶ月ほどのあいだ、もうそろそろのはずだと、そのことばかりを考えて待ち焦がれていた。
しかし、来る日も来る日も一向に現れない。
まさか今年はないのだろうかと、真面目に悲観しかけていた僕は、ついに見つけたのだ。
そして、いささか興奮している。

28年目のThe Eddieの季節は、やはりやってくるのだ。

The Quiksilver In Memory of Eddie Aikau 2012/2013.
クイックシルバー・イン・メモリー・オブ・エディ・アイカウ 2012-2013
Waimea Bay, Hawaii
Dec.1,2012 – Feb.28,2013

オフィシャルサイト
http://quiksilverlive.com/eddieaikau/2013/home.en.html

カニカピラ!

Kani Ka Pila!

カネオヘの町の中心部からカヘキリHwy.を越えた山側の一画の、短く刈り整えられた美しい芝草の広場に到着すると、そこにはすでに少しずつ人々が集まり始めていた。
若い家族や年配の夫婦、あるいは気心の知れた仲間同士でやってきては、地べたに腰を下ろすのに手頃な大きさの敷物や、折りたたむことのできる一人掛けの簡易チェアを持ち込み、それぞれが思い思いの場所に陣取って、適度に緩やかな広がりを持った空間を作り出している。
太陽が西から斜めに射し込み、まだ十分に明るい休日の午後の広場に寄り集まってきたのは、この島の町で暮らす人々であり、そして、今の僕がそうであるように、島のミュージシャンたちが奏でる島の音楽を楽しむために、ここへやってきたのだ。
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ミスター・サイミン

Shiros Saimin Haven | Waimalu

アイエアでモアナルアFwy.を降りてから99号線を西に向けて少しだけ走り、朝とも昼とも付かない食事を、僕は途中のワイマルで調達することにした。

ショッピングセンターの駐車場の、入口に比較的近い位置に車を停め、建物の正面に沿って並ぶいくつかの小さな店舗の前を歩いて通り過ぎながら、僕は一軒の食堂に掲げられた大きな看板を見上げた。
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Hawaiian Sunのストロベリーグァバジャム。

Hawaiian Sun

こんがりと焼いたトーストに塗るものといえばバターないしはマーガリンというのがもっぱらな家の子供だった僕にとって、朝の食卓に時々登場する瓶詰めのジャムは、塗って食べることよりも運だめしを楽しむことに重きを置いた一品だった。
赤い半透明のイチゴジャムをティースプーンですくいあげた中に偶然混じる果肉の粒の大きさに比例して、その日の運の良し悪しが決まるのだ。
そのささやかな運だめし遊びは、実はオトナになった今でも、僕の朝の食卓におけるひそかな慣わしとして続いているのだということを、この際だから告白しておこう。
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Only Good Times

Sunset at Northshore

学び舎を巣立ち、出会った友や恩師との別れを惜しみつつもこれから進む新たな道に喜びと希望を見出していくのだといった、社会に出ていくほんの少し手前の年代のこの時期ならではの心情をうたった歌を、かつてこれまでに何度か経験した卒業という節目のたびに聞いたり覚えたりした記憶が僕にもある。
惜別と期待のいずれの気持ちに重きを置いたものであっても、それぞれに思い浮かべることができる名曲がいくつかあるけれど、その中で僕にとっての永遠のスタンダード曲を挙げるとしたら、Keola & Kapono Beamerの「Only Good Times」が間違いなくそのうちのひとつに値する。
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エディアイカウが海に消えた日。

Hokulea, Eddie Aikau

北緯20度50分5秒、西経157度16分5秒の地点を地図で探しあてて行くと、そこはオアフ島から南東に向かった洋上を示していることがわかる。
ラナイ島の西の沖およそ20マイルつまり30数キロメートルの距離の、モロカイ海峡を抜けた先にあたるこの位置は、34年前の今日エディ・アイカウが、悪天候で遭難したホクレアに共に乗り合わせ絶望の淵にあった仲間たちの救助を求めに向かった、最期の場所だ。
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Fabric Rainbow

at Fabric Mart

雨の降る気配など微塵も感じられない、カラカウアAve.沿いの午後の遅い時間。
見上げた窓に、虹のカーテン。

どれが優れているとか劣っているとか、そういう概念は色には存在しない。
そこには違いがあるだけであり、互いの足らない要素を補完しあう関係が成立している。
色とはつまり調和の問題なのであり、不要な色など、なにひとつないのだ。

THE EDDIE 2011-2012|003:Eddie Would Go



2002年に初版が発刊された”EDDIE WOULD GO”は、1940年代半ばから70年代後半のハワイに実在した偉大なビッグウェイブライダー、献身的なライフガード、そして名誉あるホクレアのクルーであり、当時のネイティブ・ハワイアン文化復興の潮流にも大きな影響を与え多くの人々に慕われたエディ・アイカウ、実名をEdward Ryan Makua Hanai Aikauという、ひとりの男の生涯と彼が生きた時代のハワイの社会を克明に記録した書物だ。
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