正月気分から抜け出して、新しい年が本格的に始動するとともに新調されるものが僕にはいくつかあるのだけれど、その中でも特に、あまたの種類の中からあれやこれやと手に取って思い悩んだ末に、自分の気持ちと感触に最も馴染むものを「今年のモノ」としてひとつだけ採用するという行為を毎年楽しみにしているのがスケジュール帳なのである。
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「フルケンCOLLECTION」カテゴリーアーカイブ
ゼロハリバートンは、修理してこそ価値がある。
信頼のおける性能のよさと息の長いメンテナンス部品の存在、そして、大量の時間が染み込んでもなお美しさを失わず、それどころか一層そのよさが引き出されるデザインとを持ち合わせ、したがっていつまでも使い続けたいと思わせてくれることが、僕が僕自身のものとして所有して日々の生活の中で使っていく物を選ぶにあたっての原則となる基準のひとつだ。
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広告の旅を楽しむ。
10年をひとつの区切りと考えて、いくつかの区切りを現在から遡った時代の世相や人々の関心事、生活様式といったものがいったいどのような有様であったのかを、具体感を伴って想像したり、埋没した記憶を引き出すことのできるちょっとしたお勉強のような遊びとして、その当時に出版された雑誌などに掲載されている商品や製品、企業などの広告をつくづく眺める作業は実に楽しい。
なかでも、僕自身の経験や記憶と重なりあるいは想像が及ぶ時間の幅との接点と程良い位置関係にある、1950年代から1980年代前半にかけて世に出た広告の数々は、どんなに事細かに綴られた分厚い教科書をもってしても及ばない、僕にとっての大変に優れた歴史の教材だ。
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大空に咲く美しい花、東京に。
思い出のピンバッジ
格安な料金を売りにしたLCCの台頭や経営コストの逼迫によって、航空業界は企業合併や整理がすすんでいる。
そんな状況のさなか、今年の1月30日にロサンゼルス国際空港からラスベガスのマッカラン国際空港へ向けたフライトを最後に、デルタ航空に完全統合されたノースウエスト航空。円周の内側に北西の方角を示す三角形が描かれたロゴマークが印象的な赤い尾翼も、もう見ることができなくなってしまった。
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1ドル25セントのタイムマシン
Amazon.comのKindleやAppleのiPadの出現で、読書にも「効率化」の波がおとずれそうな気配の昨今。ハンディな電子端末機器には、紙でできた本など問題にもならないほどの膨大な量の情報を収めることができる。しかし、装丁の美しさや手にしたときの質感、時を経た独特の色合いや香りといった、紙媒体の書籍だけが持つ味わいは、効率や情報量の話だけでは決して片付けることのできない、本というものが持つ重要な価値のひとつだと考える。
「ALL ABOUT HAWAII」とタイトルがつけられた、文庫本ほどのサイズのこの本。
題名が示すとおり、島の歴史や文化、気候、そこに暮らす人々や言語、産業、教育、政治など、ハワイという土地のあらゆる面を全352ページを使って解説した、1962年に第86版としてStar-Bulletin Printing社から発行されたものだ。エキゾチックな黒髪の美しい女性がイラストになった表紙や、1冊1ドル25セントという値段が、時代を感じさせてくれる。
当時のハワイの社会情勢を伝える統計的な細かい数字なども載っていて圧倒的に活字の割合が多いのだけれど、文章を補足するためにところどころに挿入されている図柄や古い写真はどれも興味深い。特に文字フォントや広告のデザインには、今の時代では出すことのできない古き良き時代の雰囲気が濃厚に漂っていて、手にとって眺めているだけで一瞬にして50年も前の過去にタイムスリップしたかのような楽しさが味わえる。これもたっぷりと染みこんだ時間が創り出す、紙の原物ならではの味わいのひとつなのだ。
そんな味わい深い広告デザインの数々を、これから折に触れてご紹介していきたいと思います。