THE EDDIE 2011-2012|003:Eddie Would Go



2002年に初版が発刊された”EDDIE WOULD GO”は、1940年代半ばから70年代後半のハワイに実在した偉大なビッグウェイブライダー、献身的なライフガード、そして名誉あるホクレアのクルーであり、当時のネイティブ・ハワイアン文化復興の潮流にも大きな影響を与え多くの人々に慕われたエディ・アイカウ、実名をEdward Ryan Makua Hanai Aikauという、ひとりの男の生涯と彼が生きた時代のハワイの社会を克明に記録した書物だ。

僕がかつて1990年代初期の頃にサーフィン雑誌の記事の中で拾い読んだことを微かに記憶していた、唯一稀有のビッグウェイブサーフィンコンテストであるThe Quiksilver in Memory of Eddie Aikauでその名を讃えられるエディ・アイカウという人物について書かれているということが気になり、是非ともこれは読んでおかなくてはいけないという直感的な気持ちに導かれるようにして、6年ほど前に、当時ワイケレ・センターにあったBorders Books & Musicで購入した。
それ以来、正確な数はもう覚えていないけれど、ことあるごとに幾度も読み返し、今では自分自身の根底の在り方を強烈に示してくれる、僕にとっての座右の書という地位を獲得している。
特に毎年のこの時期、The Eddieのウェイティング期間中にこの本を開くときの僕の気持ちは、敬虔という言葉で表現して差し支えないほどの純粋さに立ち返り、文章に綴られる彼の生きざまに強く心を打たれストーリーの中に引き込まれていく。

合計271ページ、枚数にして140枚近くにもなる明白色の良質な紙を厚みのあるハードカバーで装丁したこの本は、手にしてみるとそれなりに重い。
そのうえ僕のものにはエディと直接に縁がある人々からの署名とメッセージがところどころに書き添えられていて、その意味合い的な重さが加わることで、本自体の質量をはるかに越える重厚感を備えた特別な一冊になっている。
自宅でじっくりと腰を据えているときだけでなく、その日の気分次第では屋外に連れ出して読んでみたくもなるので、もう少し手軽に持ち運べる軽さであればいいのにと思っていたところ、表紙のデザインと写真のページが一部差し替わっている以外には中身になんら変わるところがない、軽量で廉価版のペーパーバッグを数年前に見つけて、僕はその場で購入を決断した。
こうして二代目を手に入れたことで、最初に手に入れたハードカバー版は、僕だけの貴重な蔵書として自宅の書棚に並べられることになった。

このバイオグラフィー作品の構成を支えているのは、かつてエディと同じ時間を共有し素顔の彼を知る人々による、数々の記憶や思い出の証言だ。
思い出を語るこれらの人々の多くは、今もなおハワイのコミュニティに根ざし、様々な媒体や機会を通じて出逢える人々であり、そこで描写されている当時のハワイの情景は、すでに失われてしまった部分も多いけれど、物事の本質を正しく知ろうとする目線を向けるならば、今でもその断片を自分自身の目で見つけることができる。
違う土地と世代に生まれ育ちその実在を知らない僕にとってのエディは、活字や映像の中に生きる伝説のような存在であるはずなのだけれど、僕が今そうした人々と同じ時間軸のなかにいて、変わらない風景を見ているのだということを自覚することで、この作品が橋渡しの役割を果たしてつながる時間を辿り戻った先には、かつてエディアイカウという偉大なハワイアンが確かにいて、僕の勝手な思い込みに過ぎないことがわかりきっていながらも、いつかどこかで出逢ったことがある旧知の存在に思えてくるのだ。

“Eddie Would Go”
The Story of EDDIE AIKAU, HAWAIIAN HERO and Pioneer of BIG WAVE SURFING
www.eddiewouldgo.com

Stuart Holmes Coleman著
出版社:
<ハードカバー版>
MindRaising Press
<ペーパーバッグ版>
St. Martin’s Griffin

2 thoughts on “THE EDDIE 2011-2012|003:Eddie Would Go

  1. お久しぶりです。
    私は約二週間のハワイ島とオアフ島の素敵なハワイライフを終えて先日帰国しました。
    ハワイ島でサーファーの方と出逢い、大会の話を聞きましたが今回、開催はされなかったみたいですね。
    フルケンさんがエディさんに想いを馳せて語る文章からきっと過去にエディさんとの繋がりがあるんだろうなぁって凄く感じました。私も今回のハワイ島で恐らく、過去に私がハワイ島で暮らしていたんでは無いか?と思える出来事や人物を知る事となりました。その方の事に関わる場所に何回も訪れる事になってまたその方に敬意を払う儀式にも立ち会う事が出来て感動してまた涙すら浮かんだあの出来事はきっと一生忘れないでしょう…
    ハワイに惹かれるのには何かしらの意味があるんですねo(^-^)o
    オアフ島ではマカプウも行きました。とても素晴らしい場所でした。
    今年はもう一度、ハワイ島に行く事になりそうです☆

  2. Puaさん、こんにちは。
    どうも、ご無沙汰してます。
    ハワイ島に行かれたんですね。
    マカプウも!あのダラダラ坂は暑くて結構きついですよね。
    すばらしい経験をされてきたようですね。
    この本を読んで、人の価値というのは信念の在り方で
    決まるのだということをあらためて思い直しました。
    人に流されない、自分の人生を生きなきゃ、ですね。
    今年もThe Eddieはついにお預けのようです。
    また来年のお楽しみです。

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