学び舎を巣立ち、出会った友や恩師との別れを惜しみつつもこれから進む新たな道に喜びと希望を見出していくのだといった、社会に出ていくほんの少し手前の年代のこの時期ならではの心情をうたった歌を、かつてこれまでに何度か経験した卒業という節目のたびに聞いたり覚えたりした記憶が僕にもある。
惜別と期待のいずれの気持ちに重きを置いたものであっても、それぞれに思い浮かべることができる名曲がいくつかあるけれど、その中で僕にとっての永遠のスタンダード曲を挙げるとしたら、Keola & Kapono Beamerの「Only Good Times」が間違いなくそのうちのひとつに値する。
彼らを代表する1978年のアルバム「Honolulu City Lights」に収録され、ハワイで高校時代を過ごし卒業したかつての年代には馴染みが深いこの曲を僕が初めて聴いたのは、1980年代前半の頃だ。
当時聞いた深夜のFM波の番組の小さなセグメントの中で紹介され、流れていたと記憶している。
無邪気な若い頃に心通わせた友と過ごした時間に後悔はなにひとつなく、楽しいことだけだったという過去に向かっての追憶と、人生はままならないことばかりで人の気持ちは時間とともに移ろうものだけれど、思いを共にする人にめぐり逢い自分で決めた行き先に向かって進んで行くならば、そこにも後悔はなにひとつなく楽しいことばかりなのだという未来に向けた希望を、穏やかなスラックキーギターの旋律に乗せて歌うコンテンポラリーハワイアンの美しいハーモニーは、一度聴いて忘れ難く僕の記憶に深く留まった。
タイトルと歌い手の名前をうっかり聞き逃してしまった僕がこの曲に再び巡り会ったのは、その数年後に見た映画「Big Wednesday」の中だった。
1960年代初期から70年代前半にかけてのアメリカ西海岸におけるサーフカルチャー全盛期にいた若者たちが否応無く社会の中に巻き込まれ大人へと成長していく時間の流れを四つの季節になぞらえ、時代とともに社会のありかたや人の考えは変わってしまっても旧い友との信頼は海や風と同じように昔のまま変わらずに在りつづけるのだとうったえる不朽の名作のエンディングテーマとして、これ以外にはあり得ないほどに見事に調和していた。
社会に出る前の時期に経験した歳月の節目というものを意識しなくなってしまってから、気がつけばもうずいぶんと長い月日が経った。
忙しそうな振りをしながら垂れ流すように歳月を浪費することを、もっともらしい理由をつけて正当化しているような毎日だけど、実はその毎日の連続が、僕らが人生と呼んでいるそのものなのだ。
大きな慣性が働く目の前の現実とうまく折り合いをつけながら、もう一度、節目の大切さを思い返してみよう。
オトナになってから聞く卒業を題材にした歌は、あの頃よりもはるかに心に染みてくる。
“Only Good Times”はこちらから視聴できます。
(mele.comのサンプル版mp3ファイルにリンクします)
私も先日、卒業式に出かけるであろう袴姿の学生さんを見たときに
懐かしい気持ちになりました。私も卒業式に歌った歌を思い出して
なんだか胸がキュンとしましたよ:)
春は、また新たなスタートの季節ですね。私も新人の頃に抱いていた希望とか不安とかをまた思い出しつつ、頑張ろう~!と思いました。Mahalo!
yoko-kalaunuさん、こんにちわ。
昨日までの最上級生が、きょうからはまた新入りとして一から始める。
4月というのは気持ちを切り替えるいい節目ですね。